大学院進学のための研究計画書の書き方(3)
研究計画書の構造
- タイトル
- 研究の概要
- 研究の背景・目的
- 先行研究(研究の背景や研究の貢献に書くことも)
- 研究の貢献
- 研究の枠組み(理論的予想など)
- 分析方法
- 期待される成果
ここから研究計画書の本文になります。
全体を通じたルールとして伝えておきたいのは、
概要と同じように基本的にはどの段落も4文から構成されている
ということです。
多くの場合以下の4文になります。
・トピックセンテンス(その段落のメッセージ)
・問題の確認
・問題の解決方法
・解決方法に対する評価もしくは方法の詳細
(スウェイルズ、フィーク、1998)
そして、もっとも重要なことですが、トピックセンテンスと関連のない話題は、同じパラグラフの中は書いてはいけません。
一つの段落のメッセージは一つと決まっているからです。
さて、本文の書き方に進みましょう。
3.研究の背景・目的
5.研究の貢献
いきなりですが、ここが研究計画書の出来不出来を左右する最も重要なポイントです。
もし研究計画書が1000文字程度だった場合、背景、目的、そして場合によっては貢献も同じ段落に書くことになるでしょう。その場合は、3文目までは、研究の概要(書き方(2))と同じ内容でいいと思います。
1文目:目的
2文目:あつかう問題(背景:研究の意義)
3文目:分析方法
となっています。
多くの人は背景から書き始めたいと考えるかもしれません。
文章の書き方に正解はないので、どちらでもいいかもしれませんが、個人的には
短い文章の場合は目的を先頭にすべきだと思います。
目的はResearch questionについて
背景はResearch questionの位置づけ、問う意義について
説明する箇所ですので、より重要な目的を先に書く方が良いのです。
パラグラフリーディングをする人は1文目しか読まないという理由もあります。
4文目は研究の貢献を書くのがいいでしょう。
「5.研究の貢献」と「8.期待される成果」は同じようなことを書くことになるのではないかという気がしてしまいます。個人的には、次のように考えています。
Research questionとは、検証されるべき理論的な予想をもとにたてられおり、
研究の貢献とは、理論的な予想に対する検証結果としてのAnswerであり、
期待される成果とは、その理論的なAnswerをもとに提示される政策(問題への処方箋)のことです。(もちろん状況次第なですが、このブログを読むあなたはひとまずこれで書きましょう)
まず、理論的予想ですが、これは通常は先行研究をたくさん読んでそれに従います。自分でゼロから考えることは通常はしません。その方が読者が理解しやすいですし、多くの問題にはすでに何らかの理論があります。新しい理論をたてたいのであれば、既存の理論的な考え方を拡張するのがよさそうです。
書き方(1)で決めたテーマで理論を考えるとすれば、
・誘拐に失敗した際に支払うコストは非常に高いので通常は誘拐をしない
・ただし、農業収入の不意の減少に対処できなかった場合に失うものはより多い
・このような時に、農民がやむを得ず誘拐をする
を説明できるものでしょうか。
例えば、「人は損得を考えて犯罪をする」はどうでしょうか。この理論は先進国でもしばしば観察される現象として様々な分野で議論されています。
そこで、4文目の文章としては、
「この分析の結果から、短期的にどれほど貧しくなると誘拐をするようになるのかを明らかにすることができる。」
などが自然に導かれます。
ちなみに、1文目から3文目は以下の通りでした。
1文目:「本研究の目的は、〇〇国の???年から???年のデータを用いて、天候不順による収入の低下が誘拐を増やすことを調べることである。」
2文目:「外国人を対象とした誘拐はの増加は、外国の資金流入に負の影響を与えるため、途上国政府も非常に頭を悩ませている問題であるが、どのような時にどのような理由で誘拐が頻発するようになるのかについて、信頼性の高い証拠がない。」
3文目:「そこで、天候不順による予測できない収入の減少が地域ごとに異なるタイミングに発生していることに着目し、操作変数法によって誘拐件数増加との関係を調べる。」
2000字以上あるのであれば、背景、目的、貢献をそれぞれ別の段落にすべきです。Research question、それを問う意義、そして問のAnswerはどれも研究の根幹をなすものだからです。というよりもこの3つが研究(計画)の基礎ですから、それぞれを丁寧に議論すれば研究計画の厚みがぐっと増します。
その(4)へつづく