大学院進学のための研究計画書の書き方(4)

書き方(1)書き方(2)書き方(3)の続き

 

研究計画書の構造

  1. タイトル
  2. 研究の概要
  3. 研究の背景・目的
  4. 先行研究(研究の背景や研究の貢献に書くことも)
  5. 研究の貢献
  6. 研究の枠組み(理論的予想など)
  7. 分析方法
  8. 期待される成果

 

4.先行研究

先行研究を紹介する理由は、自分の研究の位置づけ、貢献を明確にするためです。要するに自分の研究をアピールするために書きます。関連する研究を紹介する場所ではありません。分野によっては評価の高い学術誌であっても関連研究を並べるような論文が掲載されていますが、そんなのは全部脚注で十分であり、研究計画で羅列する必要はありません。

 

研究計画の学術的背景を端的に説明するために先行研究を引用します。先行研究を引用しつつ主張すべきことは、「これまで多くの研究者が学術的な関心のもとで、研究を行ってきた。ただ、もっとも肝心なこのことがわかっていないので、本研究で扱う(だから、私の研究は大事)」ということです。つまり、この主張になるように逆算的に先行研究を引用し、並べていきます。どれだけ説得的にこの文章を書けるのかが研究者の力の見せ所でもあります。もし、段落として独立させるならば、やはりこの段落も4つの文章で書くことになります。

 

短い研究計画であれば、一文で説明する必要があるでしょう。つまり、書き方(2)で説明した、位置づけに関する文章(2文目)がそれにあたります。あの文章に最適な先行研究を引用することができればよいのです。

 

卒論・修論でよく見かけるのは、「このような研究は沢山行われてきたけれども、本研究が扱うアプリケーションではなかったため、それが私の研究の貢献です。」的なものです。学術的な進歩という意味では、そのような研究に意義がある場合もあるのですが、研究計画が必要な状況というのはアピールの場所なので、もう少し頑張ってほしいものです。ちなみに、このような研究は銅鉄研究(論文)と呼ばれています。

 

印象が最悪なのは、自分のリサーチクエッションの貢献を大きく見せるために、論理的ではあるけれども、引用が不明瞭だったり、論理とは関連の弱い論文を引用するケースです。嘘は書かれていないとしても、非常に残念な気持ちになります。これは、論文を深く読み込めない研究者においてしばしば起きている現象だと思います。大学院受験の際の研究計画の段階では、しばしば起きてしまうことでしょうから、指導教員や先輩、あるいはその分野をよく知っていそうな研究者に相談するようにするのが無難だと思います。ちなみに、私自身も論文を書く際には最も注意する部分の一つです。

 

たった一文かもしれないこの文章が読者に論文の価値を明示する最大の機会といっても過言ではありません。そのため、この文章を書くためだけに、かなりの時間をかける必要があります。

 

先行研究の調べかた

これは、どのような研究テーマなのかだけでなく、どのくらいの質の研究を目指しているのかに依存します。指導教員になる方があなたをどのように研究教育するのかという方針にもよるでしょうから、ここではあまり詳しいことは述べません。いつかまた別のパートで説明するかもしれません。