〔読書メモ〕ルワンダ中央銀行総裁日記

EBPMはこのようにすすめなければならないのかと

私の評価:★4.5 

『なろう系金融ファンタジー』のPOPを手書きしたらものすごく興味を惹かれる内容になった「実話?」「なろう系フォーマットって優秀なんだな」 - Togetter
という話題につられて、おもわず書店で購入。

 

途上国中央銀行技術援助計画の一環として独立直後のルワンダ中央銀行総裁となった著者の経済立て直し奮闘記。二重為替相場制度を廃止し、中央銀行の立場から農業振興をした。このほかにもバス会社の運営を軌道に乗せたり、ルワンダ商人を育成して外国人商人と競合できるようにしたり、とたった6年間の期間で本当にそれだけのことができるものなのかと驚く内容ばかり。たしかに、なろう系金融ファンタジーである。

 

私にマクロ経済学の素養がないことが原因だと思うが、著者の意思決定の根拠を理解しきれないことが多く、正直話が全く入ってこない箇所はそれなりにある。ただ、そうだとしても、物語全体のストーリーを理解するうえでは何の問題もない。

 

この本から学んだ重要なことは、(1)ステークホルダーとの向き合いかた、(2)EBPMは必要とされる場所で行う、である。

 

(1)ステークホルダーとの向き合い方は、EBPMで何よりも重要なことであろう。政策を立案・改善するためにはステークホルダーの説得が欠かせない。ノンコンプライアーばかりでは、政策を全く実施することができないからだ。もっとも重要なことはよりよい政策を実施することであり、いつも正論が必要なわけではない。交渉がこの本の大きな見どころであるが、腹芸?がふんだんに盛り込まれており、しかもそれが必ず勝利につながっていた。もちろん入念な準備を行い、あらゆる交渉事に勝ってゆく姿は感嘆するばかり。

 

(2)ステークホルダーを説得できた理由の一つは、必要とされ、信頼されているために大統領などから支持があったからであろう。能力はもとより、誠実な人柄や日々のコミュニケーションがあったのだと思う(そのように感じられる描写が少なくない)。行政や人々が解決したい問題だと思っていなければ、コストをかけて現状を変えるインセンティブはないだろう。また、行政改革にはさまざまなリスクや膨大な事務的コストがかかるため、専門家と同じ目線で取り組みたいという気持ちがなければ、やはりどのような提言も受け入れられにくいのだろう。しかし、この本に登場するどのルワンダの人々も想像以上に協力的なのだ(外国人すべてにそうだったのかもしれないけれども、きっと著者は信頼されていたのだろうという記述が最後にある)。

 

自分の子供に薦めたいと思ったので★4.5。