大学院進学のための研究計画書の書き方(2)

大学院進学のための研究計画書の書き方(1)の続き

 

 研究計画書の構造

  1. タイトル
  2. 研究の概要
  3. 研究の背景・目的
  4. 先行研究(研究の背景や研究の貢献に書くことも)
  5. 研究の貢献
  6. 研究の枠組み(理論的予想など)
  7. 分析方法
  8. 期待される成果

 

研究の概要

研究の概要もタイトルと同じように他の箇所が出来上がってから書く場所です。
ただ、書く内容はともかくともかくとして、構造はほとんど決まっていますので、私が思う構造を説明します。概要が必要となるのは2000文字以上の研究計画書の時だと思いますので、その構造の概要になります。

 

概要は最低限以下の4つの文章からなります。

一文目:研究がどの地域・時期を対象としており、どんなresearch questionなのかを書きます。

例えば、以下のような文章です。
「本研究は、〇〇国の???年から???年のデータを用いて、(原因)が(結果に与える影響)を調べる。」

書き方(1)で決めたテーマであれば次のような文章でしょうか。
「本研究の目的は、〇〇国の???年から???年のデータを用いて、天候不順による収入の低下が誘拐を増やすことを調べることである。」
ここは「何をするのか?」に関するところですので、一番書きやすいところです。

 

二文目:研究の位置づけに関する説明をします。

これまでどのような研究があり、どこまでわかっており、何がわかっていないのか、そしてこの研究が何を明らかにするのかということを説明します。つまり、この研究計画のresearch questionがどれほど価値があるのかをアピールする場所です。できれば1文で書きます。
書き方(1)で決めたテーマであれば、例えば、
「外国人を対象とした誘拐はの増加は、外国の資金流入に負の影響を与えるため、途上国政府も非常に頭を悩ませている問題であるが、どのような時にどのような理由で誘拐が頻発するようになるのかについて、信頼性の高い証拠がない。」
などでしょうか。このテーマが専門分野の方であれば、もっと良い内容にするところでしょう。

ここは研究の意義を説明する箇所ですので、どれくらい専門分野の勉強をしているのかが表れるところです。

 

三文目:research questionの検証方法を具体的・簡潔に説明します。

当然、ここはいろいろなパターンがあり得ます。
書き方(1)で決めたテーマであれば、
「そこで、天候不順による予測できない収入の減少が地域ごとに異なるタイミングに発生していることに着目し、操作変数法によって誘拐件数増加との関係を調べる。」
などを書きたいところです。
ちなみに、操作変数法とは分析手法の名前です。この方法を知っている人であれば、収入が内生変数、天候不順を操作変数にして分析するのだなということがわかります。また、一文目でデータの期間を示しているのであれば、単純な操作変数法ではなく「差分の差分法の構造を持つのかな?その場合、staggered didの問題があるかもしれないけれど、どのように対処するのかな?」と思いながら審査員は読むことでしょう。

ここはどれくらい分析方法の勉強しているのかが顕著に表れる箇所です。

 

四文目:期待される成果

ここは、どのような結果が得られることが期待されており、その成果はだれにとってどのように嬉しいのか、を説明します。社会科学の場合であれば、政策的な貢献が求められますので、どのように政策を実施すればよいかが明らかになる、ということを説明できるのが良いです。

例えば、「農業収入の変動が誘拐のインセンティブを高めていることがあきらかになるのであれば、日本の農協が提供するサービスのような、農業収入の変動を平準化する仕組みが問題を緩和すると類推することができる。」

一般に強い結論とは、強い仮定を必要としますので、分析の結果から強い主張がでてくるとかなり警戒します。ですが、大学院受験のための研究計画ですので、勢いよくこれくらいのことを書いておくのがいいように思います。

 

この4文で指定よりも長くなってしまうのであれば、各文章の言葉を入れ替えるなどして、文字数の調整をすることで対応しましょう。文章を丸ごと削るのは避けた方がいいと思います。

逆に文章を長くするのであれば、想定される読み手が知りたい情報を加筆します。概学院入試のための研究計画書は、研究の準備として必要なだけでなく、あなたの能力を測るためのものです。相手が高得点をあげやすくなる箇所を増やすのが得策です。

 

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